大阪高等裁判所 昭和40年(ラ)93号 決定 1965年7月13日
抗告人 才田友弘
相手方 提友次郎
主文
原決定を取消す。
抗告費用は相手方の負担とする。
理由
一、本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。
二、当裁判所の判断
相手方は相手方と抗告人間の大阪地方裁判所昭和三八年(ワ)第五四四七号約束手形金請求事件の仮執行宣言付判決に基き、昭和四〇年四月一六日大阪地方裁判所に対し債権差押及転付命令を申立て、同月一七日申立認容の原裁判がなされ、債務者たる抗告人及び第三債務者たる株式会社日本勧業銀行に対しいずれも同月一八日送達されたこと、一方抗告人は右債務名義たる仮執行宣言付判決に対し控訴を大阪高等裁判所に提起するとともに強制執行停止の申立(同庁昭和四〇年(ウ)第二四四号)をなし、同裁判所は昭和四〇年四月一〇日金八〇万円の保証を立てることを条件とする強制執行停止決定をなし、右決定正本は同月一三日相手方に送達され、また抗告人は同月一二日右保証金を供託したこと、ならびに抗告人は右強制執行停止決定を得たのにかかわらず、本件債権差押及び転付命令の送達を受けたので、これに対する即時抗告の申立を原裁判所になすとともに、前記強制執行停止決定正本及び保証供託証明書を執行機関たる同裁判所に提出したことが、それぞれ認められる。
本件債権差押及び転付命令の如く、執行が裁判によつてなされた場合には、民訴法五五八条の規定上これに対する即時抗告が、許されない道理はなく(即時抗告を審尋を経た場合に限定する根拠は十分でない。)、即時抗告があれば債権差押及び転付命令の効力は遮断されるのであるから、当該執行の終了時期は即時抗告期間を徒過したときか、あるいは抗告審の裁判が確定したときであると解するのが相当である。従つて、本件の如く債権差押及び転付命令が第三債務者に送達せられた後であつても、これに対し適法な即時抗告があり、かつ、執行機関たる原裁判所に強制執行停止決定正本、保証供託証明書の提出があつた以上、あたかも債権差押及び転付命令の発布手続中に強制執行停止決定正本の提出があつたのに、これを無視して債権差押及び転付命令を発した場合と同様当該差押及び転付命令は違法たるに帰するものというべきである。もしそうでなければ、債権差押と転付命令が同時に発せられる現在の取扱例の下では、債務者が折角強制執行停止決定を得ていても、これを利用して執行を阻止することは殆んど不能であり、他の救済手段も債権者貧困の場合には役立たず、その結果は頗る不当である。
そうであるから本件抗告は理由があり、原決定は違法として取消しを免れない。
よつて、民訴決九五条八九条を適用し、主文のとおり決定する。
(裁判官 金田宇佐夫 日高敏夫 山田忠治)
別紙
抗告の趣旨
原裁判はこれを取消す。
相手方の本件申立を却下する。
との裁判を求める。
抗告の理由
一、相手方は、原告を相手方とし、被告を抗告人とする大阪地方裁判所昭和三八年(ワ)第五四四七号約束手形金請求事件の仮執行宣言付判決にもとづき、債権差押及転付命令を申立て、昭和四〇年四月一七日、原裁決を得た。
二、しかしながら、右仮執行宣言付判決に対しては、同月一〇日付大阪高等裁判所昭和四〇年(ウ)第二四四号強制執行停止決定が存在する。
右停止決定は、抗告人に対し金八拾万円の保証を立てしめているところ、抗告人は同月一二日、右保証金を供託した。
右強制執行停止決定正本は、同月一三日、相手方に送達せられている。
三、よつて、右債務名義の効力は停止されているから、相手方はこれにもとづいて強制執行をすることはできない、これにもとづく原裁判は取消されなければならず、相手方の申立は却下されなければならない。そこで抗告人は民事訴訟法第五五八条により、即時抗告を申立てるものである。